「あ……あ……な、なに……」


恐ろしすぎて足が動かない……息も出来ない。


それなのに、顔が勝手に左側を向き始める。


う、うそ……そんなのやめて!


見たくないのに!


それでも、瞼を閉じることすら出来ない。


そして、私の顔が「それ」を見てしまった。


進波音と同じようなセーラー服。


だけど、傷んでいるのかボロボロで。


首が90度に横に曲がった白い顔が、ギョロッとした目を向けていたのだ。


進波音や月菜とは違う。


全然笑ってない!


真顔で、下半身が床に埋もれているような白い物。


それが、まるで水から出るかのように、床から白い脚を抜いてこちらに歩いて来た。


白い顔の鼻や口、そして足から血が流れている。


ゆっくりとこちらに近付き、手を伸ばす。


逃げたいのに足が動かない。


声も出ないし息が出来ない。


胸を締め付けられるような苦しさを感じながら、ただそれを見ていることしか出来なかった。


白い物の指が、私の胸に当てられる。


チャプッ……と、水に指先が浸かったような音が聞こえたような気がして。


その白い手が、私の胸の中に入ってしまった。


何……何なの!?


一体何を……。


恐怖に身を震わせていたその時。


ズルリと私の身体から白い手が出た。


そしてその手に握られているのは、ドクンドクンと脈打つ心臓……?


やめて……何をするつもりなの、やめ……。


心の中でそう叫んだけれど、白い物が私の心臓に食らいついて。


身体の中から引っ張られるような感覚と、それだけで命を奪われるとわかる激痛の中で、私は暗い闇に落ちる感覚に包まれた。