でも、この状況でどうやって逃げれば良いの!?


教室の中には進波音、廊下には月菜がいるかもしれないのに。


「いいか、俺がドアを開けるから息を止めてろ!わかったな!?」


「う、うん!」


進波音を見ながら小刻みに何度も頷いて、大きく息を吸って止めた。


それを確認したのか、海琉が深呼吸をして……一気にドアを開けたのだ。


瞬間、教室の中に飛び込んで来る月菜。


私の前に立ち止まり、その不気味な笑顔を私に近付けた。


やめて……私を見ないで。


お願いだから私から離れてよ!


じゃないと、恐怖と不安で今にも口から空気が漏れてしまいそう。


こんな状況下では、想像以上に息を止めるのが難しいと痛感させられる。


「ぷはっ!おい早瀬!こっちだぜ!来てみやがれ!」


もう一人の白い物を見ながら、さらにもう一人の白い物を引き付ける。


それがどれだけ困難なことか、一人でも大変だったからその難しさは予想出来る。


「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャッ!!」


やはり、息をしていなければ月菜は襲って来ない。


普通なら、私がどちらか一人を引き受けるべきなんだろうけど。


下手すれば両方死にかねないから。


私は、口に手を当てて教室から飛び出した。