しばらく、月菜の強烈な体当たりを受け止めた後、急に身体に加わる衝撃がなくなった。


シンと静まり返る教室。


諦めたのかと思ったけれど……白い物はそんなに諦めのいい幽霊ではないはず。


「何だ?何の音も聞こえねぇ。早瀬は何をしてるんだ?」


「そんなの私に……え?何の音も聞こえない?」


確かに、海琉が言うように何の音も聞こえなかった。


進波音の居場所を教えてくれる、ピアノの音さえも。


それに気付いた瞬間。








「フヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒィィッ!!」










今度は進波音の笑い声が聞こえて。



ガシャン!!



その直後に教室の窓ガラスを突き破り、上半身をダラリと垂らし、ニタリと笑みを浮かべた顔を私達に向けたのだ。


「う、うおおおおおおおおおっ!!」


「あ、いやああああああああっ!!」


もう、ドアを押さえても意味がない!


ズルリと教室内に、頭から侵入した進波音。


ゆっくりと立ち上がり、私達を見詰めていたのだ。


「わ、若葉!お前は逃げろ!俺が引き付けておくから、俺が大丈夫なうちにどこか安全な場所に行け!」


もう、この状況では、この出口が海琉のものだと信じるしかなかった。


そうでなければ……少なくとも私か海琉のどちらかが殺されてしまう状況だったから。