「チッ。結局こうなるのかよ。ふざけんじゃねぇぞ全く」


昼に月菜が現れるのを待っていたけれど、こういう時に限って現れなかったから。


夕方になり、私達は海琉の家にやって来た。


「いやあ、僕まで悪いね。でもまあ、生徒の万が一に備えて僕がいると考えれば、存在意義もあるかもしれないな」


「うるっせーよ!先生まで来て、家庭訪問かっつーの!すぐ逃げ出すくせに何が万が一に備えてだよ」


……先生には最低限敬語を使おうと努力していた海琉が、もう遠慮なしに文句を言ってる。


確かに和田先生は真っ先に逃げ出したし、わからなくもないけど。


「うわぁ……海琉の家って凄いんだね。なになに?一人暮らし?」


眠気に負けて眠ってしまいそうだった摩耶も、この家に来て目を輝かせている。


「そうだよ、悪ぃか?面倒だから説明はしねぇけどな」


そう言い、冷蔵庫から缶コーヒーを取り出して皆に配る。


「あ!野澤くん!」


「なんだよ先生」


カウンターの椅子に腰掛け、缶コーヒーを受け取った直後、和田先生はすぐに海琉に顔を向けた。


「僕にはエスプレッソをお願い出来るかな?」


「お前ホントにぶっ飛ばしてやろうか」


なんて話をしながら、私達はその時を待つことになった。