瞬間、感じる言い知れぬ不穏な空気と、おぞましいまでの寒気。


それを感じたのは私だけではなかったようで、同じタイミングで海琉と和田先生も振り返る。


だけど……。
















そこには何もいなかった。


なんだ、気のせいか。


こんな廃校舎にいたら、そりゃあちょっとした物音でも怯えてしまうよね。


そう思い、振り返って廊下を歩こうとしたけれど、私は勘違いしていた。


確かに感じた不気味な気配があったことを。


私の正面……逆さまに吊るされたような状態で、白い物の醜悪な笑顔が……私に向けられていたのだ。


「あ……」


声を出す間もなかった。


白い物の手が私の頭部を掴み、その口が私の左目に噛み付いた。


バキバキと音を立てて、顔の骨が噛み砕かれるのがわかる。


左の眼球が、ドゥルンと白い物の口の中に入り、噛み千切られる!


「あ、あああああっ!!」


「わ、若葉っ!!や、野郎っ!」


白い物から離れた私と入れ替わるように、海琉が白い物に殴り掛かった。


でも、その右の拳さえも白い物は掴み、食らいついたのだ。


バキバキと音を立て、三本の指が噛み千切られた。