和田先生は少し寂しそうに、でも嬉しそうに笑みを浮かべている。


「今の、白い物ですよね?先生が言ってた進波音さん」


「ああ、そうだよ。もっと僕が彼女を支えてあげられれば……こんな事にはならなかったのかもしれないね」


そう言いながら教室を見回し、私達の背中を押して音楽室を後にする。


「本当に机なんてあるのかよ。どこにもそんなの見当たらねぇよ」


「うん、学校に机がないなんて不思議だけど」


廃校になるなら、ピアノが置いたままというのも違和感があるけれど。


普通なら真っ先に運び出されそう。


「ふむ……夢の中で見たことはないかな?僕は昨夜見たばかりだから、あまり調べてなくてね」


「いや、ここに連れて来るつもりだったなら、調べてほしかったっすよ。それに、机なんて……あったか?若葉」


思い出すのが面倒なのか、いきなり話を私に振る。


「え、えっと……机、机。そんなのあったかな。そもそも私達は出口を探してたから、机なんて気にして見てない……ってあれ?」


いや……思い出した。


私、確か学校で居眠りした時に、夢の中で目を覚ました時に机に突っ伏していたような。


「机、あったのかい?」


「えっと、向こうの校舎の一階の教室だと思うんですけど……」


そう、指をさして私が言った時だった。


背後で、ドサッという音が聞こえたのは。