「まだ冷静に自身を分析出来るなら大丈夫さ。野澤くんと神崎さんは強いみたいだ。心が弱ければ、とっくに壊れているよ」


この状況でそう言われても、まだまだ頑張れと言われているようで嬉しい気はしない。


少し歩いて、音楽室の前までやって来た。


夢の中と同じく、開いたドアが私達を誘っているかのよう。


そして、私達が音楽室に入った時……不思議な光景が私の目に飛び込んで来たのだ。


「え?」


廃校舎とは思えない綺麗な音楽室。


ピアノの前には、セーラー服の女生徒。


窓の外を見ながら、ポロンポロンと鍵盤を弾いていたのだ。


「そ、そんな……な、波音?」


和田先生がポツリと呟いた直後、私達に気付いたのか、女生徒がこちらを見て満面の笑みを浮かべたのだ。


「和田くん、待ってたよ。早くこっちに来てよ」


嬉しそうにこちらに手を伸ばす女生徒に、和田先生が一歩踏み出して、手を伸ばす。


だけど、その言葉は和田先生に掛けられたものではない事に気付く。


「ごめんごめん。補習がなかなか終わらなくて。で?どこまで出来た?」


「まだ全然。良いメロディが浮かばなくて」


和田先生がいた場所から、若い和田先生らしき男子生徒がピアノに駆け寄って。


女生徒の仲良さげにピアノに向かった。