それは、あのノートのことを言っているのだろう。


「わ、私はバッグに入れたよ?だけど入ってなかったの。どこかに落とすなんて絶対にありえないし」


「それはもうどうでもいいよ。原因は、あのノートを見てしまったことに間違いないだろうからな。それよりも、早瀬を見た時に、あの言葉の意味が何となくわかったんだよ」


あの言葉……「ミシナンネ」って言葉の意味?


この状況では、それ以外考えられないだろうな。


「き、聞きたくないけど……知らないのも怖い気がするし。もったいぶらずに教えてよ」


もう、何が何だかわからないといった様子で、頭に当てて摩耶が呟いた。


「早瀬のお母さんが言うには、早瀬は何かを恐れて眠っていなかったって言っていただろ。眠っていなかったのに学校に来て、授業中も居眠りすらしていなかった」


「そりゃすげぇよな。俺なんて一限目から眠くなるぜ?」


確かに海琉は、いつも机に突っ伏して眠っているような印象しかないから。


「お前の話はどうでもいい。つまり、鬼気迫る表情でノートに何かを書き続けていた。少しでも刺激を与えて、眠らないようにする為にだ。人間、ずっと起きていられるもんじゃない。それこそ、寝ないでいると人格が壊れてしまう可能性だってあるんだ」