ビタン!


ビタン!


ビタビタビタン!!





何度も何度も車のガラスを叩き、頭部をガクガク揺らして。


「いやあああああああああっ!!来ないで!来ないでっ!!」


「なんでこいつがいるんだよ!俺は夢でも見てんのかよ!」


車の中はパニック状態。


そして、運の悪い事に、信号に捕まって車の速度がどんどん落ちて行く。


「な、なんだ!?落ち着くんだキミ達。何が見えてるんだ……丸山、安全運転を頼むよ」


先生には見えていないのか、私達と違って冷静そのものだった。


そして、完全に停車した瞬間。


白い物が後部座席のスライドドアを開けて、中に入ってこようとしたのだ。


「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」


「テ、テメェ!入ってくるんじゃねぇっ!」


ドアの横に座っていた海琉が、白い物に向かって蹴りを放つ。


そのおかげか、白い物は後方に吹っ飛んで道路に倒れた。


だが、ただ蹴り飛ばされただけではなかったようで。


「んぐうううううううぅぅぅぅぅっ!!痛てぇ!痛てぇっ!!」


海琉の左脚の、膝から下がなくなっていて、車内に血が飛び散った。


「か、海琉!!どうしようどうしよう!」


痛がる海琉を見て、私は何も出来なかった。