あれは私が見たただの幻覚だったのか、それから印は動かずに。


海琉を待たせるのは悪いからと、急いで浴室を出た。


ドライヤーで髪を乾かすのもそこそこに、服を着て外に出る。


念の為、リュックに下着と着替えを詰めて。


「お、お待たせ」


「若葉、本当に悪い!俺はてっきり、また白い物にでも襲われたかと……」


「わ、わざとじゃないのはわかってるからね。今回だけは許してあげるよ。ここで喧嘩してても意味はないからね」


そう。普通の生活をしていて、こんな事があったら喧嘩にでもなってるだろうし、顔も見たくないと思うかもしれないけど。


今、海琉は、悪夢から抜け出す為に必要な仲間なんだから。


二人で歩く学校への道。


話していたのは月菜のこと。


「でもよ、どうして早瀬は俺達をトイレの個室の上から見てたんだ?見付けたならすぐにでも襲えば良かっただろうに」


「わかんない。振り返った時にはもういたし、確かにすぐは襲って来なかったね」


それは偶然なのか、他に何か理由があるのかはわからない。


でも、白い物が二人……しかも、月菜に関してはノートに書かれていたことが通じない。


出口を見付ければ殺されずに起きられるけど、それが困難になったということだけは理解出来た。