首だけじゃない。


左腕にある顔も、笑いながら何かを言っている。


その光景に、まるで背中に氷でも当てられたかのような悪寒が走り、声にならない声が口を衝いて飛び出した。





「ひ、ひやあああああああああぁぁぁっ!!な、なになになになに!?」




私の意思とはまるで関係なく動き、笑っている顔が気持ち悪い!


全身泡まみれで腰を抜かし、浴槽にもたれて悲鳴を上げることしか出来ずに。



「ど、どうした若葉!!何かあったか……」



ガチャッという音と共に開けられたドア、そして立ち尽くす海琉を見て、気味の悪い印を見せるべきか、裸を見たことを怒るべきか。


数秒、時が止まったような感覚に襲われた後、私は海琉に洗面器を投げ付けて声を上げた。


「な、何ドアを開けてるのよ!バカ!変態!最低っ!」


鍵をかけ忘れた私も悪いんだけど、何もいきなりドアを開けなくていいじゃない!


「お、おわっ!?いや、若葉が悲鳴を……す、すまねぇ!」


慌てて海琉がドアを閉める。


普段ならもっと早く、反射的に怒るんだろうけど……私も海琉も判断力が鈍っている。


だから、純粋に私を助けようとしてくれたんだと思いたいけど……よりによって裸を見られてしまうなんて。


恥ずかしくて海琉の顔を見られないよ。