「ぬおおおおおおおっ!!」


「わ、わわっ!?」


突然耳元で聞こえた大絶叫に驚き、私は飛び起きた。


と言っても、目を開けて床を転がるだけだったけれど。


床?


ああ、私は海琉の家で階段を上ろうとして、白い物がいたから……。


「ハァッ……ハァッ……くそっ!なんだってんだよあいつ!冗談じゃねぇぞ!」


廊下で目を覚ました私と海琉は、汗だくで何があったのかを整理しようとしたけど……眠すぎて目を開けているのが精一杯だ。


「どうなったの?私、耳を引きちぎられて、腕を折られたまでは覚えてるんだけど……」


まるで、ついさっき折られたような痛みを、身体中に感じる。


「全身の骨を折られた……って感じだな。くそっ!白い物は見てたら動かないんじゃないのかよ!」


壁を拳で殴りつけ、苛立ちを露にする海琉。


確かに白い物は視線を逸らさなければ動かないはずだけど。


でも、今考えればおかしな点はいくつかあった。


まず、和田先生だ。


白い物は進波音という人で、見たことがあるはずなのに、あの悲鳴はまるで別人でも見たようだった。


それに、私達を襲った白い物。


ピアノの音が聞こえていたのに私達の前に現れた。


そして、その服装はセーラー服ではなくてブレザー。


不気味に歪んだ笑顔だったけれど……ハッとそれを理解した私は口を開いた。


「あの白い物……月菜じゃなかった?」