そんな事があったから、私は早々に家から出る事にした。


「皆さん、来てくれてありがとうね。月菜もきっと、喜んでるわ」


玄関先でおばさんが涙ぐんで、小さく「うぅ」と声を漏らしながら私達を見送ってくれた。


「い、いえ……お忙しいところお邪魔しました。また後で来させてもらいます」


そう言って、ペコリと頭を下げたと同時に、海琉が私の腕をバシッと叩いた。


何よと、頭を上げて海琉の方を見ると、顔面蒼白で顔が引きつっている。


「ちょっと何よ」


「バ、バカ、お前……前見ろ」


いつも強気な海琉の声が珍しく震えていて、一体なんだろうと思って前を向くと……奥の和室。


月菜が寝ていた部屋から、ガクンガクンと身体を揺らしながら、月菜が歩いてきたのだ。


生き返ったとか、そういうのではないというのは雰囲気でわかる。


「お、おばさん……う、後ろ」


今までに感じたことのない強烈な悪寒と恐怖に包まれながら、そう小さく呟く。


「え? 後ろ?」


おばさんは涙を拭いながら後ろを振り返るが、首を傾げて再び私の方を向いた。


「何かあるかしら?」


そんなやり取りをしている間にも、月菜はゆっくりとこちらに近付いて来ていて、私達は後ずさりしながら玄関を出ていた。