私達が音楽室を出ると同時に、大きな音で鳴っていたピアノが止んだ。


廊下に出たばかりだというのに……先生がいるから音楽室に戻ってもいいけど、三人が同じ部屋にいるというのもまずい気がする。


「か、海琉!こっち!」


辺りを見回した私が、海琉の手を引いて走ったのは、近くにあったトイレ。


一番奥の個室に入って、鍵をかけずに二人で息を潜めた。


今、白い物がどこまで来ているかわからない。


だから、鍵をかける音が聞こえてしまうと、ここにやって来る可能性があったから。


「だから言ったんだよ。無駄話ばかりしやがって。何がノブリンだよ気持ちわりぃ」


散々な言われようだな、和田先生。


でも、和田先生は私達と違って、出口を探しているようには見えなかった。


もっとこう……他の物を探しているような。


そんな感じさえした。


そして、ポロンポロンとピアノの音が聞こえ始めた。


音がおかしいけれど、それでもこの廃校舎には不協和音が妙にマッチして。


鎮魂歌(レクイエム)と言っていたけど、どちらかと言えば夜想曲(ノクターン)のような……。









「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」







そんな中、当然のように白い物の声が聞こえた。


いつもとは違う笑い方だけど、音楽室に向かっているのは間違いない。