「いやいやいや、今はんなことどうでもいいんだよ!何が大事な事だよ!明日でもいいだろ!」


「え、えぇっ!?ぼ、僕は結構重要な話だと思ったんだけど!」


「全くよ。この部屋に何かあると思って来てみれば、まさか先生の昔話を聞かされるとは思ってもみなかったぜ。若葉、何もねぇなら行こうぜ。さっさと出口を探して起きようぜ」


海琉がイライラしてるのは何となくわかったけど、いきなり怒り出すとは思わなかった。


それも仕方ないか。


私と同じで、40時間くらい不眠状態なんだから。


「す、すまなかったよ。もっと詳しい話は明日するとしようか。僕は……ここで波音に捧げる鎮魂歌(レクイエム)を奏でるとするよ。キミ達が、出口を見付けられる事を祈りながらね」


そう言って鍵盤に視線を落とした先生。


調律が狂ったピアノで、一体どんな曲を弾こうと言うのか。


「あの……そう言えば先生の名前をまだ聞いてませんでしたけど」


「和田……和田信長(ワダノブナガ)。今まで通り、先生と呼んでくれればいいけれど、ノブリンと呼んでくれても構わないよ」


「わかりました。じゃあ、私達は行きますね、先生」


ペコリと頭を下げて、私達は音楽室を後にした。