「危なかった……ありがとうね、海琉。海琉が来てくれなかったら、私は今頃死んでたよ」


「ま、まあ気にするなって。それより引き倒して悪かったな」


気付けば、海琉に抱かれるように階段に座っていて、私は慌てて立ち上がった。


こんな時になんだけど、男の子にこんなことをされたのは初めてだから、なんだか恥ずかしい。


「し、仕方ないよね。それより……どうしよう。白い物があの校舎の方に行ったみたいだけど。これじゃあ、行くのが怖いよね」


あの声のことも気になるけど、私の聞き間違いかもしれないし……何よりも、なんて言ってるのかがわからなかったから、相談しても仕方がない。


「さて、どうすっかな……ん?」


少し悩んで、立ち上がろうとした海琉が、足元に落ちている拳大のコンクリートの破片に気付き、それを手に取った。


「白い物がいなかったら、あっちの校舎の三階をもっと調べられるのにね」


と、言った私の前を通って、階段を下りて行く。


手にはコンクリートの塊。


「若葉はそこにいろ。ちょっと危険かもしれねぇからな」


そう言って廊下に出た海琉は、手にしたコンクリートの塊を反対側の校舎に投げ付けたのだ。