靴を履いているおかげで、足は守られている。


海琉が来てくれたというのもあるけど、眠気が過ぎて、警戒心が薄れてしまっているような。


階段を下りながらそんなことを考えていると……突然背後から口を塞がれて、そのまま引き寄せられるように後方に倒されたのだ。


え!?


な、なに!?


「シッ!なんで気付かねぇんだよ。ピアノの音が止んだ。動くな」


海琉に抱えられるように階段に腰を下ろして、耳を済ましてみると……本当だ、音が聞こえない。


注意力も何もかも、眠気にやられて落ちているんだ。


白い物がどこから来るかわからない。


もしかすると、三階にいるかもしれないし、この階段にやって来るかもしれない。


背後から迫られると、白い物を見ることすら出来ない。


ここにいることに気付かないように祈るしかなかった。







シャリ……。


シャリ……。








どこからか、微かに足音が聞こえてくる。


多分これは……下の階?


ガラスを踏み締める音が……徐々にこちらに近付いて来ているのがわかる。


ゆっくりと……不規則な音が。


やめて、こっちに来ないで!


心の中で必死に叫んで、海琉に口を塞がれながら、私はただ震えていた。