「ほら、コーヒーだ。気休めかもしれねぇけど、ないよりマシだろ」


そう言って渡されたのはブラックコーヒー。


私、苦いのが嫌いだから、昔一度口に含んだだけで、それ以来飲んでないんだよね。


でも、こんな状況でそんなことは言ってられない。


「あ、ありがと。そう言えば摩耶達は大丈夫かな。あの調子じゃ、光星は大変だと思うけど」


「さあな。人の心配なんかしてねぇで、自分の心配をした方がいいだろ、今の状況だとよ」


「うん……そうだね」


私と海琉は、まだ比較的穏やかでいられているから大丈夫だけど、不安はある。


私には白い物が見えて、それがいつ現れるかわからないということ。


幻覚とか見間違いなら、悩むこともないんだろうけど、痛みまで感じるものが、見間違いなはずがないから。


缶コーヒーを開け、グイッとコーヒーを口に入れる。


「うぇぇ……苦い」


「寝るよりマシだ。苦いのと痛いのどっちが良いんだよ」


そんなの答えるまでもないけど、こんなことに巻き込まれてなきゃ、どっちも嫌だって言ってるんだろうな。


「まあ、若葉が寝そうになったら、俺が叩き起こしてやるから安心しろよ」


いつ眠ってしまうかわからないこの状況では、海琉のその言葉はとても心強く感じる。