だとしたら、さっきのはなんだったの?


夢を見たわけでもない、かと言って絶対に私の思い込みなんかじゃない。


痛みが……夢の中で殺された時のように、鮮明に残っているから。


でも、海琉は見ていないというのが気になる。


「ねえ、本当に白い物がいたの!私の唇に噛み付いたの!」


「そう言われてもな。俺は何も見てねぇし、お前はボーッと突っ立ってただけだぜ?それにしても唇を噛まれたとか、白い物とキスしたのかよ」


「もう!そうやって茶化して!本当にいたんだから!」


夢の中だけじゃなく、現実にまで現れるとしたら、私はどうすれば良いんだろう。


それも、海琉には見えていない、恐らく私だけにしか見えない白い物。


「じゃあなんでお前だけ見えてるんだよ。少なくとも俺とか他の二人にも見えねぇとおかしいだろ?」


「それは……そうなんだけど。もしかして……これのせいかな」


考えないようにしていたけど、どうしてもそうとしか思えない。


右の袖を捲って、海琉に手首を見せた。


夢の中で、白い物に掴まれた場所。


考えてみれば、今までは白い物に掴まれた場所にこんな痕は付かなかった。