「な、なんで……なんでこんなところに!まさか私、夢の中に……」


いや、違う。


夢の中特有のふわふわした感覚がない。


眠気でふわふわしてしまうけれど、それとは違った感覚だから。


でも、そうだとしたら……どうして現実に。


「ん?おい若葉!早くしねぇと信号が変わるぞ!」


どうして……海琉には見えてないの?


ああ、早く横断歩道を渡らないといけないのに。


頭が思考を拒否して、足が動かない。


このまま前に進めば、白い物に捕まってしまう。


でも、後退するほどの余裕はなくて。


どうしようどうしようと悩んで。


眠気も相まって、ほんの一瞬行った瞬き。


「フヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!」


その一瞬の瞬きの間に、白い物が私に迫る。


そして……白い物の口が目の前に見えた。


まるでキスでもするかのように私の上唇に噛み付いて……そのまま頭を強引に振り上げたのだ。


何が起こったのか、私にはわからなかった。


何かがされるような、ビリッという音が頭の中に響いたかと思った次の瞬間……激痛が走った私の顔。


それが何を意味していたのか。


私の顔は、白い物によって、上唇から上の皮膚を剥がされてしまったのだ。