「次は俺達がああなるかもしれないんだよな」


「う、うん。今でも少しイライラするからね」


死の恐怖に耐えられなくなったら、簡単に壊れてしまうのだろうか。


今の摩耶みたいに。


「あ、そうだ。ねえ海琉、夢の中でさ、大きな校舎の三階って行ったことある?玄関の向かい側にある校舎なんだけど」


さっき見た夢の中で、不思議に感じたのはそこ。


どこにいても同じ音量で鳴っているはずのピアノの音が、そこだけやけに大きくなったから。


「大きな校舎ぁ?二階は行ったけど、三階は一度もねぇな。なんだよ、そこに何かあったのかよ」


あったと言えば出口があったんだけど。


「もうね、蜘蛛の巣だらけで大変だったんだから。廊下の端が見えないくらい真っ白で。それでね、ピアノの音が大きくなるの、そこだけ」


「ピアノって……先生が弾いてたあの曲がか?」


「うん。音楽室の前だと、うるさいくらいに大きくなるの。まあ、その音楽室には誰もいなかったんだけどね」


夢の中で、さらに眠かったから、少し不思議だな程度にしか思わなかったけど。


海琉も大して気にならなかったのだろう。


「ふーん」と返事をしただけだった。