そう怒鳴ると、摩耶は駆け出して階段を下りて行ってしまった。


ほんの数分前まで、先生の話を聞いて、何とか頑張ろうって話をしていたのに。


「何だよ……いきなりどうしたんだ摩耶のやつ」


「いや、わからなくもないな。恐らく摩耶は、夢の中で何時間も過ごしていたんだ。なのに、実際にはほんの数秒だろ?この先、何度寝てしまうかわからないのに、何度あの苦しみに耐えなければならないのかわからないのに。それを考えて、耐えられなくなったのかもしれないな。あいつ、そんなに強くないから」


「お前は行かなくて良いのかよ。大好きな摩耶があんななのによ」


「な!バカ!海琉お前っ!」


眠い頭には、やけに情報量の多い会話が耳に入って来た。


確かに、何時間も過ごしたと思って現実では一瞬だったら、嫌になるというか絶望するというか。


明日、先生がどこかに連れて行ってくれるみたいだけど、それがやけに遠く感じてしまうかもしれない。


それこそ、何日も、何週間も先の事のように。


光星が摩耶を好きなのは、そりゃあ初日の夢の中でとはいえ、私達を裏切って摩耶の手を引いて逃げたんだからわかるよね。


「わりぃな。眠いから俺自身何言ってるかわかんねぇよ」