私達は、先生にそう言われて音楽室を出た。


再び階段に戻り、話の整理をする為に。


「それにしてもおかしな先生だったよな。自分で『印』を剥ぎ取ったんだとよ。右目も抉ってよ」


人差し指で自分の右目を掘るようなジェスチャーをする海琉。


「死ぬよりマシ……そう思ったんだろうな。最悪、俺達もそれをする覚悟を持たなきゃならないかもしれないな」


「や、やめてよ光星。それよりも、明日どこに連れて行こうとしてるんだろ。肝心なことは何も教えてくれなかったし」


少し不安だけど、それ以上に不安を感じることがあるから、この苦しみから抜け出せるなら何でも良いとさえ思えてしまう。


「わかんねぇなぁ。あの先生の演奏は何度でも聴きたいって思うけどよ、先生自体は何考えてんのかわからなくて苦手だぜ」


「結構かっこいいのにね。もったいない」


私がそう言うと、海琉は顔を引きつらせて。


「若葉……お前、あんなのが良いのかよ」


「まあ、自分に酔っていなかったらね」


というかなんの話をしているんだろう。


演奏を聴いている時は大丈夫だったのに、今はその反動なのか、凄く眠くてたまらない。


頭が回らなくて自分でも何言ってるかわからなくなってきたよ。