「僕達は……最近、この曲を聴いたんです。先生の演奏ほど洗練されてはいませんでした。もっと荒いと言うか……そう、完成されていない感じのこの曲を」


ああそうだ。


私達は夢の中で聴いたのと同じ曲が聞こえたから、音楽室にやって来たんだ。


危なく忘れてしまうところだったよ。


頭が回らないって怖いな。


光星がそう言うと、先生の表情が少し強ばったようになった。


「まさか……あ、だけど僕はいつもここで弾いているから、それが聞こえたんじゃないのかな?」


「違います。滑稽と思われるかもしれませんが、僕達は夢の中で聴いたんです。夢の中で、先生が演奏する曲が聞こえた。だから、俺達はここに来たんです」


光星がそう言うと、先生は右手で右目を押さえるように覆って。


「まさか……そんな。いや、もしかしてキミ達は、早瀬さんに何か話を聞いたりしたかな?それで僕の所にやって来たとか」


「言ってることがよくわかりません。早瀬からは何も聞いてませんし、先生のこともさっき知ったばかりです。何か知ってるんですか?僕達の呪いについて」


光星がそう言うと、明らかに先生の表情が変わった。


まるで、悲しんでいるかのような……辛そうな表情に。