「そっか」
「うん」
返す言葉が見つからず、相槌をうつことしかできなかった。
「そろそろ行くね。蓮の顔も見れたし、満足だから」
莎奈匯は立ち上がり、保健室に干してあった何枚かのカラフルなタオルを手に取る。それを小脇に抱えると、莎奈匯は僕の前を去っていく。
ポタリと、僕の首筋に冷や汗が伝った。
「さ、莎奈匯」
「なに?」
「お見舞い、行くから……その、えっと」
莎奈匯は珍しいものを見るような目で僕を見つめ、笑いながら首を横に振った。
「お見舞いなんていらない。わたし、帰ってくるもん」
「莎奈匯……」
「でも、もし本当になにかあった時は、お母さんに連絡するよう伝えておくね。ありがとう」
莎奈匯はそう言って、泣きそうな顔で微笑む。僕は彼女を引き留めることができなかった。