彼女は笑顔を見せると、保健室の中を見渡した。





「蓮、その格好、わたしみたいだよ」





 ベッドから身を乗り出し、薄いカーテンから顔を覗かせる僕の姿に莎奈匯は声を上げて笑った。彼女はソファに腰かけ、大きく溜息をつく。

 僕がベッドから体を起こし、パイプ椅子に腰かけたところで、莎奈匯が口を開いた。





「蓮は、彼女とうまくいってるの?」





「まぁ、一応な」





「そっか」





「お前こそ最近ここに来てなかったし、どうかしたのか?」





 莎奈匯は苦笑する。

 僕の心が、沸き上がってくる最悪の言葉を掻き消そうとざわつく。

 少しの沈黙の後、莎奈匯は笑って言った。





「わたしは元気だよ? でも今度ね、入院することが決まった」





 莎奈匯は吐き捨てるように言った。





「え?」





 覚悟はしていた。どんなに考えを否定したところで現実をねじ曲げることはできない。

 僕は戸惑いを隠せず、声を上げる。





「それって、つまり……」





「ここにはもう、しばらく戻ってこないと思う」





 莎奈匯は笑っていた。

 僕は彼女が強い女の子なのだと思っていた。反面、今にも崩れてしまいそうな危うさを秘めた女の子。





「だから今日はね、忘れ物を取りに来ただけなの。学校にも、これから休学手続きしてくるところ」





 色素の抜けた金に近い髪を靡かせ、莎奈匯は微笑む。