笑いながら言葉を続ける。その声は徐々に真剣なものに変わっていった。弱々しくなっていく声。微かな笑い声と共に、震えた声色はすぐに彼女の異変を知らせてくれた。
「わたしね、最近病状も安定してるの。これからちゃんと治療に専念するから、もうこの保健室には来ないよ」
「どういうこと?」
莎奈匯は泣いていた。必死に声を噛み殺しながら肩を震わせる。
僕が肩に触れると、莎奈匯はその手を振り払った。
「だからもう、わたしの病気は心配しなくても大丈夫だよ」
「……やめろ。そんな嘘つくなよ!」
僕は莎奈匯の肩をガッチリ掴み、視線を合わせる。
突然の怒鳴り声に驚いた表情を見せる莎奈匯の瞳からは大粒の涙が流れ出していた。心配をかけまいと、必死に笑顔を作り、本心を隠そうとする莎奈匯。
僕も、同じように生きてきた。他人との過度な接触を避け、むやみに人脈を広げず、思い出を作らない。他人に極力迷惑をかけないような生き方をしてきた。
苦しみを隠しながら生きる。その点では莎奈匯も僕も同じだった。だからこそ、僕には彼女のついた嘘が許せなかった。
剥ぎ取られた莎奈匯の仮面。
「私……どうしたらいいの?」