「彼女の名前は海愛。海に、愛と書いて、みあ(・・)」





「ねぇ、彼女は可愛い?」





 莎奈匯は僕の上から退いた。そのまま背中を丸める。

 なにを言い出すのかと思いながら首を傾げて言った。





「さあな」





 曖昧に返答すると、莎奈匯はベッドに体を倒す。しばらく彼女の視線に捕まり、僕はその場を動くことができなかった。





「わたし……蓮のことが好きだよ」





 莎奈匯の口癖。莎奈匯は困った時、いつも最後に好きだと言う。

 僕はそのたびに莎奈匯の言葉を聞き流していた。





「いつも言うよな、それ」





「いけない? 思ったことはすぐに伝えなきゃ、後悔してからじゃ遅いじゃない」





 莎奈匯は笑っていた。その瞳は遠くを見つめていた。





「莎奈匯は本気なのか?」





「なにが?」





「僕のこと」





「うん」





「そっか」