*   *   *





 夕飯の最中、僕はおもむろに箸を置いた。

 カタンという食器の擦れる音に、母は僕の方に顔を向けた。目の充血が酷くなった気がする。





「……泣いたの?」





「な、泣いてないよ」





「目、腫はれてる」





 僕の指摘に母は慌てて目を隠した。それが事実を肯定する行動となった。





「泣いたんだろ」





「ごめんね、もう泣かないから」





 眉を下げた母の笑顔に、僕は思わず目を逸らしてしまった。



 謝られる理由が見つからない。謝るべきなのは母を不幸にさせてしまっている僕のはずなのに。



 精神的な苦しさで息が詰まる。呼吸をすることさえ苦しく感じられた。





「そういえば母さん、僕、今回のテストで学年一位だったよ」





「そう、すごいね。頑張ったんだね」





「うん」





 テスト学年一位。こんなものが慰めにもならないことは十分承知している。

 それでも、母が安心してくれるのならなんでもよかった。