久しぶりに訪れた保健室は、なにも変わっていなかった。幼い頃から薬品の臭いに慣れているからか、病院に似たこの場所は落ち着く空間だ。

 僕は辺りを見渡し、「ふぅ」と息をつく。

 莎奈匯を探し、窓際の薄いカーテンの仕切りを開ける。クラリと僕を襲った眩暈めまい。ゴクリと息をのんだ先には寝息をたてて眠る莎奈匯がいた。

 しばらく保健室を訪れていなかったせいか、久しぶりに見た莎奈匯は少し大人びて見えた。伸びた髪の毛が時間の経過を物語る。

 いつの間に、こんなに小さくなったのだろう。見ない間に、莎奈匯は痩せたように見えた。





「んん……」





 突然の唸り声に寝返り。ビクリと僕は身を跳ねさせる。





「……あれ? 蓮じゃん」





 寝ぼけ眼まなこを擦りながら起き上った莎奈匯はボサボサの髪の毛をくしゃくしゃと掻き乱した。





「悪い。起こしたな」





「いいよ、ずっと寝てたから。んんっー体痛い!」





 体中の骨をパキパキと鳴らしながら大きく伸びをする莎奈匯。





「大丈夫かよ……」





 僕の口角は緩んでいた。

 その様子を莎奈匯は不思議そうに見つめていた。