*   *   *





「運転手さん、急いでください!」





「そうは言ってもねぇ」





 僕と智淮さんは渋滞に巻き込まれていた。空港は目の前にあるのに、動けないもどかしさに苛立ちが募る。

 智淮さんは言った。





「蓮くん、走ろう」





 焦った。僕にとって走る行為がどれほど体に負担がかかるのか、智淮さんはなにも知らない。そして迷った末に選択肢がないと分かると、僕は覚悟を決めた。





「分かった。運転手さん、ここで降ります。お釣りはいらないです」





 僕は五千円をタクシーの運転手に手渡すと、走った。目の前まで目的地が迫っていた。