智淮さんの大声が空に響く。

 突然の大声に驚きながら、僕は目を丸くする。智淮さんの瞳からはポロポロと涙があふれ出した。後からあふれて止まらない涙。

 智淮さんは両手で涙を拭いながら、震える声で呟いた。





「あたし……もう那音の彼女じゃないもん」





「…………」





「今さらあたしが行ったって意味ないじゃない!」





 僕は智淮さんの顏をじっと見つめ、溜息をついた。





「好きなんだろ?」





 僕の真剣な眼差しに、智淮さんは唇を噛み締める。





「なぁ。那音のこと、まだ好きなんだろ?」





「…………」





 智淮さんはそのまま黙り込んでしまった。動かない状況。





「このままでいいのかよ」





 絞り出すように発した言葉。自分の言葉が胸に突き刺さる。

 このままでいいのかよ。



 いいはずがない。だから今もずっと迷いながら生きている。





「……あたし、会えないよ」





 涙で震える声はこちらの涙腺まで刺激する。





「どうして?」





 僕が尋ねると、智淮さんは苦笑して言った。





「だってあたし、フラれたんだよ? いくらあたしが那音のことをまだ好きでも、このまま行ったらただの未練がましい女じゃない」