* * *
「ただいま」
「おかえり。早いわね? もしかしてまた……」
「軽度の発作で治まったから大丈夫。心配しなくてもいいよ」
「ちゃんと連絡しなさいって言ってるでしょう!」
「……ごめん」
玄関の扉を開けると、母が立っていた。
「心配させないでよ」
母の目が赤く充血しているのを僕は見逃さなかった。心なしか鼻声だ。さっきまで泣いていたのだろうか。
そう考えると胸が痛くなり、僕はそっと傷ついた拳を後ろ手に隠した。
「腹へった」
「晩ご飯まで待ってなさい」
「少し寝るから夕飯の時間に起こして」
「分かった」
僕は傷ついた拳を隠しながら自室へと向かい、手当てされた箇所かしょが目立たないように絆ばん創そう膏こうを貼り直した。