「那音、今何時だっけ」
「え? 三時だけど……」
那音が飛行機に乗るのは午後五時だ。あと二時間。僕は突然立ち上がり、那音に視線を向ける。
僕の行動を不思議そうに見つめる那音。
「五時には戻ってくるから、少し待ってて」
「突然どうしたんだ? いいけど、時間ヤバくなったら行くからな」
「分かってる。お前に見せたいものがあるのを忘れてた」
「え?」
状況がのみ込めない那音。僕は謝りながら空港を後にした。
外に出た僕は冷たい風に身を震わせながら、辺りを見渡して、近くに停まっていたタクシーに乗り込み、とある場所を目指した。