青空が広がった初秋。
「蓮……絶対また会おうな」
その日がやってきた。夕方、那音は飛行機に乗り、北海道に旅立ってしまう。なに一つ那音と智淮さんにしてやれないまま、この日が来てしまった。
「いつでも会えるさ」
僕の言葉に那音は苦笑いを浮かべた。
気持ちの整理がついていないのだろう。別れを切り出して以降、智淮さんと連絡を取っていないらしい。やつれた那音の表情にかける言葉が見つからない。
「智淮さんに言わなくていいのか?」
僕の言葉に那音の体がピクリと反応する。視線が合った那音の表情は曇っていた。その後、すぐに力ない笑顔へと変わった。
今日、那音が北海道に旅立ってしまうことを知っているのは僕だけだ。智淮さんに正確な日時は教えていないらしい。那音はこのまま本当の気持ちを大切な人になにも伝えないまま旅立つつもりなのだ。
当初はそれが那音の決めた道ならば、と奴の意思を尊重しようとした。けれど那音の反応に、気持ちが変わった。
やはり、このままでいいわけがないのだ。
「もう彼女でもなんでもないし……言う必要なんてねーだろ」
「そうか」
「あっさりしてるな、蓮は」
ハハハと渇いた笑い声を上げながら、那音はキャリーケースを足元で転がす。落ち着かない様子だ。今日の那音はずっと暗い表情を浮かべている。
空港の待合室の椅子に腰かけながら、僕と那音の間にしばらくの沈黙が流れた。
那音の両親は仕事の都合で先に北海道に向けて数日前に旅立ったらしい。一人で旅立つ那音のために、僕は朝早くから彼の見送りに来ていた。最後くらい、親友として那音に接してやりたかったから。