「まだ那音のこと、好き?」
けれど、簡単に諦めたくない。他人のために必死になるのは、新鮮な気分だった。
「……好きだよ……まだ、大好きなの……」
恋は、難しい。好きの気持ちだけで生きていけるのなら、それはどんなに幸せなことだろう。
「僕に任せてくれないかな」
僕に恋の素晴らしさを教えてくれたのは、那音と智淮さんだ。絶望ばかりだった人生が希望ある未来に変わったのは二人がいてくれたから。だから、これは恩返し。
「…………うん?」
「詳しくはまた今度。じゃ、切るよ。おやすみ」
「あ、うん! おやすみ」
通話を切り、僕は溜息をつく。
これから沢山のことを考えなければならない。二人にとって、一番の解決策は一体なんだろう。
僕は机に向かいながら、新しいルーズリーフに思いつく限りの案を書き殴っていく。実行不可能な案しか浮かばない。
背伸びをしながらそのままベッドへと倒れ込む。電気を消すと、満月の光が部屋いっぱいに射し込んでくる。干したばかりのシーツはお日様の匂いがした。
なぁ、海愛。僕、どうしたらいい?
「うまくいかないな……」