*   *   *





 その夜、僕の携帯電話に着信があった。

 相手は那音。珍しい着信相手に僕は首を傾げながら通話ボタンを押した。





「もしもし」





 那音の第一声は、情けない泣き声だった。





「蓮ー!」





 声が耳に響く。





「あーっ! うるさい!」





「お前、酷いな!」





 携帯電話の向こう側で那音の鼻を啜る音が聞こえる。僕は泣き喚く那音の気が治まるまで待ち、ようやく落ち着いたところで話を切り出した。





「で、どうしたんだ?」





「オレさ……智淮と別れた」





「え!」





 鼻声の那音の告白に、僕は思わず大声を出してしまう。母が入浴中だったため、難は逃れた。

 僕は胸を撫で下ろし、深呼吸をし、落ち着いたところで那音の話をじっくり聞き始めた。





「なんで……」





 海愛と僕を結果的に引き合わせてくれた那音と智淮さんに今では本当に感謝している。

 だからこそ、普段人と関わることを嫌う僕だったが、二人の力になりたいという結論に至った。

 那音に詳しい話を聞くと、先ほどまでの元気は嘘のように、小さくなった声が電話口から聞こえた。