「じゃあ、ごゆっくり」





 パタンと扉が閉ざされ、海愛の母親は階段を下りていく。

 久しぶりに見た海愛の姿は、ほんの少しだけ痩せたように見えた。

 僕の姿を見た瞬間、海愛は満面の笑みを浮かべた。





「蓮くん!」





「約束通り、会いに来たよ」





 僕は微笑み、ゆっくり海愛の隣に腰かける。ベッドが二人分の重さで沈む。





「会いたかった……」





 海愛は愛しそうに僕の肩にもたれかかる。





「僕も」





 穏やかな、幸福の時間が僕らの間に流れていた。





「ごめんね、お母さん、うるさかったでしょう」





「優しそうな人じゃないか」





「優しいけど……ちょっと私たち姉妹を溺愛し過ぎてるっていうか」





 苦笑いを浮かべる海愛。

 また一つ、僕は海愛が持つ幸せの欠片に触れた。寂しい心を隠しながら、僕は笑う。





「ねぇ海愛」





「ん?」





「抱き締めてもいい?」