「治ったら、また一緒に遊びに行こう、な?」
「……うん」
僕の言葉に海愛は渋々頷き、大人しくなった。
「ちゃんと寝るんだぞ」
「はーい」
海愛の頭を優しく撫で、僕は部屋を出る。その瞬間、また咳き込む声が耳に届いた。
玄関まで来ると、見送りに来た雨姫さんが僕に不思議な質問をした。
「ねぇ蓮くん。あの子のこと、本当に好き? 愛してる?」
雨姫さんは真剣な表情で僕を見つめていた。
僕は向きを変え、しっかり雨姫さんと対峙する。
「はい」
雨姫さんの質問に即答する。僕らの間にしばらくの沈黙が流れ、壁時計が時を刻む音が響く。カチカチと規則的な音の中、雨姫さんは大きく安堵にも似た息を吐き出した。
「そっか!」
途端に笑顔を見せる雨姫さん。首を傾げる僕に対し、雨姫さんは再び真剣な顏で言った。
「海愛ね、本当に蓮くんのことが大好きなの。あの子が彼氏つくるなんて初めてのことだし、姉として心配でね。海愛を泣かせたら、許さないからね」
雨姫さんの言葉に僕の胸がチクリと痛む。
僕らの恋愛は、どう足掻いても海愛を泣かせてしまう結果になると分かっていたからだ。