僕は次の日も海愛の部屋に足を運んでいた。
「熱はもういい?」
「うん、微熱かな」
「そっか、早く良くなるといいな」
ベッドの端に腰かける海愛の隣に座りながら、僕は言った。
「……ありがとう」
海愛は僕の肩にもたれかかる。密着する肩にドキリと心臓が跳ねた。
「どっ……どうした?」
焦る声色を隠しながら質問すると、弱々しい海愛の声が返ってくる。
「……なんか、ボーっとするの」
「は?」
海愛の言葉に僕は一瞬にして冷静さを取り戻し、額に触れた。
熱い。
「お前、全然熱下がってないじゃないか!」
「微熱だよ……」
弱々しく返答し、へにゃりと笑う海愛。そんな彼女に僕は大きな溜息をつく。
「やっばり僕、帰るわ」
「え、なんで! 大丈夫だって!」
しがみついてくる海愛の腕を振りほどき、僕は険しい表情を浮かべた。
「だめ。お前は僕が来ると全然休もうとしないし、元気なフリするし。完全に治るまで、会うのは止めよう」
「……さみしいの」
弱々しい声にグラリと思考を惑わされながら、僕は必死に心を鬼にする。