僕の真剣な眼差しに、彼女は一瞬表情を曇らせる。その後すぐに返答があった。
「アナタを助けたいと思ったから」
時間が一瞬止まった。爽やかな風が僕と彼女の髪を擽くすぐり、かけ抜ける。
微笑む彼女の眼差しに僕は目が合わせられなくなり、視線を逸らした。
「助けなくてもよかったのに」
つい、可愛くないことを言ってしまった。
「でも、アナタは怪我けがをしてましたよね」
「まぁ、そうだけど……」
「道で青い顔した人が蹲うずくまっているのに素通りするようなことはできませんよ、私」
彼女は怒っているように見えた。
「ごめん。そんなつもりじゃなかった」
自分のことで他人と深く関わりを持つなんて初めての経験だった。そのせいで素直にコミュニケーションがとれない。正直、僕は困惑していた。
「私も突然すみませんでした」
彼女はそう言って、僕と同じ格好で道に座り込み、頭を下げた。
「ちょ、やめろよ!女の子に道端で正座させて頭下げさせるなんて、どうしたら……」
僕の動揺した声色に気がついた彼女は顔を上げて笑った。
「じゃあ、おあいこですね!」
「え?」