「いつか、こうして抱き締めてやれることもできなくなる」





「……」





 海愛は抵抗を止め、じっと黙って僕の言葉を聞いていた。

 抱き締めた海愛の体は驚くほど小さかった。強く力を入れたら簡単に手折たおれてしまうのではないかと心配になるくらい。

 心から愛する人をこの手にひしと抱き締める幸福を、僕は噛み締めていた。





「海愛、愛してるよ」





 互いを確かめるように深く重なりあう唇。長いキスはこれから限られた時間以上の温

 もりを必死に探しているようで、涙が出そうになった。

 これから沢山の思い出を作ろう。沢山の証を刻んでいこう。僕らが精一杯に生きた証を。





「……蓮、大好き」





 三度目のキスは、涙の味がした。