「あの、大丈夫ですか!」





 天は僕を見放していなかった。





「……え?」





 滴る汗と荒い呼吸の中、振り向いた先には一人の女の子が立っていた。

 どうしてこんな時間に制服を着た女の子がいるのか、どうして僕のような人間に声をかけるのか、言いたいことは山ほどあった。一番印象的だったのは彼女の表情だ。目を逸らさず、不安そうな瞳をこちらに向けている。

 彼女はガサゴソと自分の鞄かばんを漁り出した。その行動に僕は首を傾げる。





「手……大変!血が出てる……貸して」





「あ、はい」





 僕は言われるがまま血が滲む拳を彼女に預けた。





「えっと、あの……」





「止血します」





「え、あ、はい」





 彼女はテキパキと消毒を行い、止血していく。呆気あっけにとられるほど流れるようにキレイな所作に、僕は見とれていた。





「はい、応急処置はしましたけど……一応病院に行った方がいいかもしれないですね。骨に異常があったら大変ですし」





 通りすがりの少女は僕の拳の手当を終え、額の汗を拭ぬぐった。





「どうして……」





「ああ、私の母が看護師をしていて、私も将来そっち方向に行こうかな、なんて考えている「そうじゃない」





 彼女の言葉を遮って、僕は言った。

 さっき苦しめられた発作は、どうやら軽度のまま治まってくれたようだ。





「どうして僕を助けたの」