「なにを言って……」





「このままじゃ、キミは……ボクは死んでしまう」





「どうせすぐに死ぬさ」





 泣き出す少年の言葉に僕は即答する。それでも少年は僕の言葉が聞こえていないような素振そぶりで言葉を繋げた。





「彼女のせいで、ボクは死ぬんだ」





「鈴葉が僕を殺すなんて、ありえない」





「いつまでそう言えるかな。キミはいつまでそうやって現実から逃げ続けるつもりなの?」





 少年の言葉を聞き終えた瞬間、僕の体に激痛が走った。





「うっ……ぁぁぁあああっ!」





 これは、そう。まるで心臓を抉られ、握り潰されているかのような圧迫感と苦痛。

 これは夢だ。

 分かっているのに、あまりに現実味を帯びた痛みに戸惑う。





「はぁっ……はっ」





 荒い呼吸に薄れゆく意識。

 少年は光のない真っ黒な瞳で、苦しむ僕を見つめ、泣いていた。





「こんな痛み、比べものにならないよ」





 僕は意識を失わないように必死だった。今、ここで目覚めてしまえば真実を知ることができなくなると思ったから。





「彼女につけられた心の傷はもっと痛い」





 僕は少年の言葉の意味を必死に考えていた。





「分かるだろう? 死の痛みが」





「死ぬのなんか、怖くないっ……」





「本当は泣き崩れたいんだろ? キミはいつも強がって生きているから」





「……」





 少年の言葉に僕は返す言葉を失ってしまった。

 自分のことは自分が一番よく知っている。

 少年の言っていることは事実だ。それは強がる僕の一番弱い部分だった。





「泣いてもいいんだよ」





 少年の姿が霞かすむ。僕は意識を失う寸前だった。薄れゆく意識の中、少年が言った言葉の意味は、最後まで謎のままだった。





「ボクは僕を救済する」





 少年は再度呟く。僕の意識はそこで途切れた。