* * *
その夜、夢を見た。
そこには以前に夢の中で出会った十歳の自分が立っていた。少年は気味悪く笑っている。
「どうして笑ってる?」
「キミこそ、どうしてそんなに強がるの?」
目の前の少年は質問を返してきた。
「強がる?」
強がってなんかいない。
「キミがそう思っていても、本質は変えられない」
少年は僕の心を読み、間合いを詰める。僕は思わず後退あとずさる。
「分かる? キミのせいで泣いている人がいるんだよ」
大人びた表情は、少年の年齢と不釣り合いだった。
「僕が誰を泣かせたっていうんだ」
「バカだな」
少年は即答した。笑顔は消え、まっすぐ射るような視線が僕に突き刺さる。睨みつけるかのような子供らしからぬ瞳に、一瞬怯んでしまった。
「……君の目的はなんだ?」
「救済」
そう言って、目の前の少年は怪しげに微笑んだ。
フッと短い溜息をつき、一瞬の隙をついて少年は僕の目の前に立ち塞がる。
僕の鳩尾みぞおちあたりの身長の少年は、僕の胸に手を翳かざし、触れた。氷のような冷たさが全身に広がる。
「ボクは僕を救済する」
少年の顔色が急に悪くなった。