「生き続けるための希望」
僕の脳裏に莎奈匯の笑顔が浮かんだ。屈託のない笑顔が印象的だった莎奈匯が初めて流した涙に僕は未だ戸惑いを感じていた。
『優しく……しないで』
莎奈匯の消えそうな声色が脳裏に焼きついて消えない。
「ちょっと妬けるな」
鈴葉はミルクと砂糖をたっぷり溶かした珈琲を揺らしながら、呟いた。
「え?」
「私に病気があればよかった」
彼女の言葉に僕はピクリと反応する。
「鈴葉、自分がなにを言ってるか、分かってる?」
僕の言葉に彼女はハッと目を見開き、うつむいてしまった。
「……ごめんなさい」
彼女は自分が言ってしまった言葉の重大さに気がつき、後悔しているように見えた。
僕はそんな彼女に優しく声をかける。
「僕にとって生き続けるための希望は、お前だよ」
僕の言葉に彼女はゆっくり顔を上げる。見つめ合った瞳はキラキラと輝いていた。吸い込まれそうな感覚に思わず視線を逸らす。
再び鈴葉に視線を向けると、彼女は笑っていた。
「本当に?」
「嘘は言わない」
「そっか、ありがとう……」
嬉しそうな、寂しそうな顏だった。そんな彼女の笑顔に、僕の胸は何度も締めつけられるのだ。