「どうして謝るんだ」
「だってわたし、気持ち悪いでしょ?」
笑顔に力は感じられなかった。
「そんなことないから、安心して寝ろ」
布団をかけ直してやると、莎奈匯は僕の方に向かって寝返り、微笑んだ。
「蓮は優しいね」
「うるさい」
「ふふ、いつもの蓮だ……もう大丈夫。ありがとう」
莎奈匯はそう言うと、僕の体を押し退のけた。突然の行動に驚く。
「どうした?」
「一人にさせて」
それだけ言うと、莎奈匯は僕に背を向け、なにも話さなくなった。
僕は莎奈匯の頭を優しく撫でた。
「僕、端のベッドにいるから、苦しくなったら言えよ」
僕の問いかけに、莎奈匯は答えない。
しばらく返事を待っていたが、莎奈匯がなにも話す気はないのだと諦め、彼女のベッドとは真逆の廊下側のベッドに横になった。
莎奈匯は声を殺して泣いていた。僕は彼女が泣いていることに気づいていたが、知らないフリをしていた。
「優しく……しないで」
絞り出すような莎奈匯の涙声が、保健室に響いた。