「図星だったろ」





「まあな」





 やんちゃに八重やえ歯ばを見せながら笑う那音。

 屈託のない笑顔に胸が締めつけられ、チクリと痛んだ。



 違う。この痛みは……発作だ。





「……ぐっ」





 体の異変に気がついた時、額にはうっすら脂汗が浮かんでいた。





「蓮!」





 慌ててかけ寄ろうとする那音の手を振り払い、僕は息も絶え絶えに言う。





「大丈夫だから……」





 大丈夫、大丈夫。

 自分に言い聞かせるように僕は呟き続ける。

 昼休みの教室の片隅で、誰にも気づかれないように僕はそっと息を潜めた。





「僕、午後の授業抜ける。先生には具合悪いから帰ったって言っておいてくれるか?」





「あ、うん……それより、本当に大丈夫か?」





 歯を食いしばりながら僕は、まだ程度の浅い発作と戦った。症状が重度になると、意識を失ってしまう場合がある。それだけは避けなければいけない。





「大丈夫」





 最後にもう一度だけ呟き、僕は荷物を持って学校を後にした。