「ねえ、海愛ちゃん」





「はい」





 なにを言われても、私は受け入れる覚悟だ。

 どんなに都合のいい言葉を使っても、私は櫻井家の嫁ではない。お義母さんの本当の娘でもない。

 大切な一人息子を失ったお義母さんから血の繋がった孫まで取り上げることは、私にはできない。





「どうして一人で抱え込んでたの? すぐに私に言ってくれたらよかったのに」





「え?」





 予想していなかったお義母さんの言葉に私はうつむいていた顔を上げた。





「昔、言ったことがあるでしょう? アナタはもう、私の娘だって。子供の幸せを願わない親はいないわ」





 涙で視界が霞む。





「優くんにも父親が必要だってことは本当だしね。女手一つで子供を育てるって、本当に大変だから、私は応援する。海愛ちゃんが選んだ人なら、きっと大丈夫よ」





 あふれ出す涙を拭き、私はお義母さんに深く頭を下げた。





「ありがとう……ございます」





「なにかあったらいつでもいらっしゃいね。ここはアナタの家なんだから」





「はい」





「あまり一人で抱え込んではダメよ」





「はい」





「今度、私にも彼を紹介してね」





「はい!」





 お義母さんとの会話に堪えきれなくなり、私は大粒の涙を流した。その場で指輪を外した私はそれをネックレスに通し、お義母さんに再び深く頭を下げた。