その発言に、僕は目を丸くした。
莎奈匯に動揺を悟られないよう平然を装う。
「どうして」
「廊下ですれ違った時に、一目惚れ?」
歪いびつな笑顔。不自然なほど明るい声色。人間観察は得意な方だ。
僕は勘づいた。
「嘘だろ」
「えー? そんなことないよ」
「目が笑ってない」
僕の指摘に莎奈匯は「あっ」と声を発する。
「ばれた」
図星を突かれた莎奈匯は途端に僕から距離を置き、舌を出して笑った。
ギシリと二人分の重さでベッドのスプリングが悲鳴を上げる。
「サボりか?」
僕の質問に、莎奈匯の声色は急に弱々しくなった。
「わたし、生まれつき体が弱くてね。いつも保健室登校なの」
悲しそうに微笑む莎奈匯に、僕は目を奪われる。
彼女が嘘を言っているようには見えなかった。似たような境遇の人間だからこそ、少なからず理解できる部分があった。